抱っこは赤ちゃんだけ
祖母は幼い私が抱っこを求めると決まって「今忙しいから。」とか「もう赤ちゃんじゃないから。」と言い、膝に乗ったりおんぶをせがむと「重いから。」と言って触れ合うことを拒否していたように思う。
なので、私には無邪気に祖母に甘えた記憶がない。
「いとこたちも、おばあちゃんに抱っこなんて言わないだろう?抱っこなんて赤ちゃんが言うことだ。」
確かに聞いたことはなかった。いとこが祖母に抱っこしてもらっている姿も見ていない。
しかし、いとこたちはみんな私より年上だったし、なによりみんな親がいた。
同居していたわけでもなくたまに遊びに来るだけだったし「おばあちゃん抱っこ!」というほど距離感も近くはないと思う。
おばあちゃんには甘えないものと言われ続けてきたのでそんなものと思い続けるしかなかったんだと思う。
母親のぬくもり
お母さんもいない私は母親の温もりというものも知らなかった。
母親のぬくもりに触れたことはあったかもしれないが記憶にはない。
だから、お母さんに甘えてる子を見るとなんとも言えないモヤっとした気持ちになった。
うらやましかったからイラっとした。
たまに来る父親も、特に抱っこやおんぶをした記憶がない。
とはいえ、私の育った昭和の時代は今ほどいつまでもベタベタしていなかったと思う。
今の世で考えたらほったらかしと思われるかもしれないくらい。
私の周りには人前でお母さんにベタベタ甘えている人はほぼいなかったし、お母さんに甘えているのは大抵友達の弟や妹といったところ。
手を繋いで歩いているのも小学生になるとほぼいなかった気がする。
男子など特に、小学生にもなると親と手をつないでいたなんて知られたら友達に冷やかされてしまう。
とはいえ、幼少期に十分親に甘えてきた子たちはそれでよかったんだろうけど、わたしにはずっとぬくもりがなかったのだから、気持ちの歪みはのちの行動に出ていたなと思う。
やきもち
ある時、祖母が近所の茶飲み仲間の家に一緒に連れて行ってくれたことがあった。
そこには私より年下の小さい女の子が1人いた。私より2学年下なのでその時1歳か2歳だと思う。
祖母は、大きくなったねぇと自分の膝に乗せて頭を撫でていた。そして、私の方を見てニヤニヤした。
私はカーッと身体が熱くなったのを覚えている。そして泣いて怒ってその子を突き飛ばした。そして、泣きながら祖母の膝に自分が座った。
私に突き飛ばされてその子も泣きだした。
祖母は突き飛ばしたことを激怒した。自分で私が嫉妬するようなことを仕掛けてきておいて激怒した。
私が膝に座ると重いと言ってどかすのによその子はいいんだと思ったら、悲しみよりも憎しみがわいてきた。
その家のおばちゃんは困ったように「よその子可愛がったら嫌だよな?」とかそんなことを言い、私を慰めようとしたが、祖母はどかすように私を膝からおろして、うるさいからもう帰れ!とはじまり、その家のおばちゃんがなだめても怒り続けた。
私は泣きながら1人で家に帰った。
まだ3〜4歳くらいの出来事だったこの時のこと、私は今も鮮明に覚えている。
祖母は私の気持ちを確認するために試したのだろうか。何のつもりだったのかはわからないが、わたしはとても傷ついた。
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