コンクールで選抜メンバーに入れなかったことで、私は気持ちが不安定になっていた。
どうせ勉強もできないし、歌も下手、音楽クラブの練習に入れ込んでいたおかげで放課後練習の後は塾三昧。遊ぶ時間も少ない。
4年生の時の先生は宿題も多かった。
学校では授業にまったく興味がなくなり、テストの問題がわからないと、わかる問題まで解かずに提出したりした。
友達と些細なことで喧嘩になることも増えて、気に入らないとクラスの女子を仲間にして無視したりした。
担任の先生もそれを把握していた。私は2学期の通知表に「情緒不安定」と記された。
通知表を渡された時、「情緒不安定」の意味がわからないなと思ったが「不安定」と書いてあるくらいだからあまり良い言葉じゃなさそうだと嫌な予感がしたが、まさにその通りで帰宅してそれを見た祖母はまた激怒してぶっ叩いてきた。
「情緒不安定ってなんだ!この成績はなんだ!」
言い返す言葉もなかった。確かに友達に意地悪だったし、授業も聞いてなかった。勉強もわからなかったし、宿題も大してやってなかった。
かろうじて森田塾に行っていたから少しは理解していたものの、色々なことにやる気がなかった。
泣くしかなかった。
「情緒不安定なんて言われて恥ずかしい!」
お前は捨てられて拾われたの他に、私が怒られる時のワードに新たにこの言葉が加わった。
私はまた口を聞いてもらえない日々が続いた。
「A子ちゃんは通知表に申し分ないと書かれていて、成績も4と5しかなかったって言ってたぞ!情緒不安定なんて書かれて恥をかいた!」
久しぶりに口を開いた祖母が言った。
情緒不安定と言われたことが祖母にとって相当腹立たしかったのだろうけど、またヒステリック?とおもいつつ、私は引き方を教わったばかりの辞書で情緒不安定の意味をを調べてみた。
【感情の起伏が激しく、気分が安定しない状態】
これは今ネットで調べたものだけど、まあそのようなことが書いてあったと思う。
その当時は情緒不安定が環境のせいだなんて思ってもいないので、意地悪ばかり思いつく自分がわからなかった。
なんでこんな気持ちになってしまうんだろう?
もうひとつ、この頃のこと。
医学的に何かあるかもしれないけど、私は鉄棒の前回りでおなかを押されると不思議な感覚があった。
親がいない自分の存在が気持ちが悪くなるのだ。
誰に話したところで説明しきれないこの気持ちは、今まで人に話したことがない。この感覚について、知っている人がいたら教えてほしいくらいだ。
情緒不安定と記してきた先生は後にも先にもこの先生だけだったが、私はそれからも情緒不安定が続くのだった。
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