漫画なんて悪
小学校4年生の時、私たちの間では少女漫画が流行っていた。
「りぼん」派「なかよし」派と「どっちも買っている」
そんな話をするのもまた当時の女子の間ではやっていて、ほとんどの女子が少女漫画に夢中だった。
私は、初めてトモチにりぼんを見せてもらった時その可愛さに圧倒された。
どちらの雑誌も、とにかく付録が可愛い。
私は特に「りぼん」の「ときめきトゥナイト」が大好きだった。
好きすぎて、大人になってから文庫版を全巻揃えたくらいだ。
その後、娘たちも夢中で読んだその漫画は続編もあり、いつの間にか長女が全部揃えていたほど。
世代を超えてどれだけの女子を夢中にさせたのかと思うほどの作品だと思っている。
何年か前の、ときめきトゥナイト展を見に行った時、懐かしさの中に、私にとっては昔の悲しみを思い出す切なさもあった。
昔の付録が展示してあって「あぁ、私どれだけこれが欲しかったかわからないよ…」とそんな気持ちになったのだ。
そう、漫画だけでなく、なんといっても付録が可愛かった。
私は早速祖母に買って欲しいと話してみるものの即答でダメだと言う。
「漫画なんて悪!勉強しなくなるだけ!」
どうしても欲しかったらそれを使わないで貯めておけば良いと言う。
お小遣いは駄菓子代50円は相変わらずだ。それも塾がない日だけなので、1ヶ月にしたら1,000円弱。
「トモチもあーちゃんも、お小遣いの他に漫画は別に買ってもらってるよ!」
と私は機嫌がいい時を見計らって何度かお願いしてみた。
「アッチは親が若いでしょ?たくさん働けるからお金持ちなの!ウチは年寄りで大した稼ぎじゃないんだから買えない!そんなことより勉強しろ!」
と何度頼んでもこの返事。それどころか2〜3回言っただけで「しつこい!」と最後にはゲンコツで殴ってきた。
トモチもあーちゃんも、アッキーも付録のピアスシールをして、全プレ(全員プレゼント)でもらったバッグをお揃いで使い、子供会の夏の行事に来た時は私だけ持っていないことがどれだけ恥ずかしくて悲しかったか分からない。
ご褒美なんてない、無視するだけ
テストで100点取ったらご褒美に買ってくれるかな?
先生に褒められる何かをしたら喜んで買ってくれるかな?
淡い期待を抱いて私は頑張ってみた。何とかして「りぼん」が欲しかった。
でも、何をどうしたとしても買ってもらえず結局「友子ちゃんか愛ちゃんに見せてもらえ!」という。
漫画も欲しいけど、付録も欲しい。付録は買わなきゃ手に入らないのに…。
しつこかった私が疎ましかったのか、祖母はその後しばらく無視してきた。
塾の月謝袋を出しても、黙ってお金を入れて渡してきたり、返事が必要な学校の手紙を出しても黙ってテーブルの上に置いてあったりした。
勉強なんかしたってご褒美もない、気に入らないと無視。
その時の私はまだ、無視されるのは自分が悪い子だからだと思っていたので、とにかくどうしたら話してくれるんだろうと、気に入られるために簡単な料理をしたりして家の手伝いを積極的にした。
気が付くといつの間にか喋ってくれるようになるのだが、私の4年生時代は常に祖母に無視されないように努めてきたと思っている。
私は友達が羨ましかった。決して贅沢なものを欲しがっているわけではないのに…。
特にトモチは「夜私がベッドに入るとお母さんが来て、さーて、漫画読〜もうっと!って持って行くんだよ〜!毎月お母さんが楽しみにしてるの。」
と笑いながら話していた。
漫画なんて悪、漫画なんか読んでたら勉強しなくなる。何度も言われたそのセリフ。
そして最終的には無視されるのか。
意地悪されたら意地悪を覚える
私は、小学生時代の中で、4年生の時が一番荒れていた。自分でもよく覚えている。
子は親の鏡というけど、本当にその通りで祖父母にされたことを友達にしてうっ憤を晴らすような
私は、そんな子になっていた。
意地悪をされればそれを覚えるだけ。
私もその後、祖父母を無視する状況になるのはもちろんのことだった。
お願いしても聞いてもらえなかったら、こちらも聞いてあげようと思わなくなる
散々無視されたら、都合の悪いことは無視すればいいし答える必要もないと思うようになる。
意地悪されたらされたぶん絶対に誰かにやってやろうと、八つ当たりの気持ちでいっぱいだったあの頃。
それまでは、幼かったこともあり心の拠り所として(そうするしかなかったのだけど)きたけど
もうそんな気持ちはだんだん薄れてきていた。
私は祖父母に対しての優しさを徐々に無くしていった。
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