風呂嫌い
私は、幼い頃お風呂も嫌いだった。今でいう風呂キャンセル界隈だった。
あの頃、自宅の薄暗い風呂は五右衛門風呂で薪で炊く風呂でとにかく熱い。しかも外にあったので裸で庭に出て裸で家に戻って着替えるという、脱衣所も何もなくキャンプじゃあるまいしと思うような風呂だった。
祖母は沸かし直すのを面倒がって、どうせぬるくなるからと最初にものすごく熱く沸かしていた。そして面倒という理由で毎日風呂を沸かさなかった。
祖父も身体資本の仕事ではなかったので毎日汚れたり大汗かいたりすることもなく、寒いからという理由で入らないことも相当あった。
私は祖母と入ることが多かった。まずかけ湯は熱いし、洗髪は痛いし、そして下手なのか毎回鼻にお湯が入る。恐怖でしかなくて風呂のたびに泣くので、とうとう毎日風呂に入らなくて良いことになっていた。
この頃は入浴が完全にトラウマだった。
そして、祖父母たちもそもそも毎日風呂に入るのを面倒がる人たちだったのでそれでよかったんだろう。
夏、プールに入った時は「今日はプールに入ったから風呂はいいね。」と言われたくらいだ。
風呂を免除されて暢気に喜んでいたほど私は風呂が嫌いだった。
五右衛門風呂から銭湯へ
気付くと、家の風呂は壊されてなくなっていた。
そして我が家はみんな銭湯に行くようになった。歩いて5分ほどのところに銭湯があったのだ。
銭湯は広くて明るくて近所の人がたくさんいた。薄暗くて寒くてお湯が熱すぎるあの五右衛門風呂に二度と入らなくていいと思ったらホッとしたのを覚えている。
意外と家風呂がない家が多かったのか、近くに銭湯があるなら家風呂は不要と思っていた人が多かったのか、銭湯にはご近所さん、顔見知りがたくさんいた。
そしてあの頃は毎日洗髪をする人の方が少なかったように思う。銭湯でも、毎日洗髪している人は少なかった。
私は相変わらず祖母の洗い方が痛くて泣いた。たまにしか洗わなくても嫌がった。シャンプーハットをかぶるのも髪の毛が引っかかって痛かったし、何より祖母の洗い方が痛かった。
そんな時、近所のおばちゃんたちはいつも「頑張れ!」と励ましてくれた。
家で洗う時は熱いお湯をかけられて、何かと痛いし泣いていると「うるさい!」と怒られてたのに、銭湯では近所のおばちゃんたちの目があるせいか怒ったりはしなかったが痛いのは変わらなかった。
泣いててうるさいからムキになって洗っていたのかもしれない。
おばちゃんたちは優しかった。
終わった後は「偉かったな〜!」とニコニコの笑顔で褒めてくれた。普段褒められないので恥ずかしかったが、励まし上手に助けられてありがたかったと思う。
神経過敏症だったんだろうか?
誰かに頭を触られると身体中がゾワゾワする。これは、大人になるまで続いて、その後自分で洗髪できるようになっても、美容室で頭を触られるとゾクゾクと震えがくるほどだった。
不思議なことに今は何ともない。
その後も、近所のおばちゃんたちが優しく接してくれた。
親子みたいに一緒に背中の流しっこをしたりして、いつの間にかお風呂が楽しくなった。それから風呂を建て直すまでの約10年、私は銭湯に通うのだった。
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