父親の家出
幼稚園時代は、私の記憶の中で最初の激動の年だったかもしれない。
幼稚園に行くのも友子ちゃんや愛ちゃんと遊ぶのも毎日楽しくて、私はやっと少し自分の身の回りが明るくなってきたと感じていたところだった。
自分のわがままで友達を困らせることがあっても、喧嘩しても、仲直りして、そうして少しずつ寂しくて泣いていることが減ってきていた。
私は友子ちゃんも愛ちゃんも大好きだったしずっと友達でいたかったし離れたくなかった。
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知らないおじさんたち
しかし、ある夏の日、心をえぐるようなショッキングな出来事があった。
ある日、店に見知らぬ男の人たちが数人来て祖父母となにやら揉めている。
大きなドスのきいた声で私は怖くて隠れていた。
祖父母はその人たちと随分長く話していたが、しばらくして帰って行った。
その夜、たまにしか来ない父親が酒を飲み酔った状態で現れ、これまた酔っていた祖父と口論が始まった。
二階で寝ていたのに怒鳴り声で目が覚めた私は一階に降りて行くと父親に「一緒に行こう。」と手を差し伸べられたのを覚えている。
でも、私は子供心に何だか嫌な予感がして「嫌だ!」と言って祖父母の後ろに隠れた。
「そういうことだ!出て行け!」と祖父が怒鳴ると父親は黙って店のシャッターを開けて出て行った。
今もあの光景が鮮明に焼き付いている。一生忘れることのない光景だ。
選択
その選択が正しかったのかはわからない。
その時は父親が好きだったが、何年も家に戻ってくることもなく、祖父母もずっと私に父親の悪口を言い続けてきていたので私は父親への気持ちを洗脳されていた。
洗脳されていたとはいえ、最終的にはどっちもどっちでどちらの家で育ったとしても私の人格形成にそう変わりはなさそうだった。
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