父親の荷物
父親が出て行ってから何年経っただろうか?
親戚中からそっぽを向かれた状態でどんな暮らしをしていたのやら、私が高学年の時に学校から帰ると仏間に大量の荷物が置いてあった。
どうしてか分からない。ある時、急に家に大量の荷物が運び込まれてきたのだ。
衣類やら、布団やら日用品、鍋やフライパンなどの台所用品、家具も運ばれてきて8畳の一部屋を埋め尽くしていた。
その家財道具一式は、どうやら父親のものらしかった。
壊れたステレオ
その中に壊れたステレオがあった。
私はそのステレオが聴けるものなのかと思い早速レコードをかけてみたけど、全く音が聴こえなかった。
残念ながら壊れていたようだった。
私はレコードを再生する機器を持っていなかったので、今まではあーちゃんのお母さんが誕生日にくれるカセットテープで音楽を聴いていた。
あーちゃんのお母さんは音楽ショップを開いていたので、毎年誕生日には流行りの歌のは言ったテープをくれたのだ。
父親は石原裕次郎が好きなようでレコードがたくさんあった。
大量の荷物の中で唯一、もらえたら嬉しいなと思っていたので正直ガッカリだったがどっちみちレコードはヤマハ時代のテキストについてくるレコードとソノシートしか持ってなかったので壊れていても諦めがついた。
父親の写真
家具の中に小さな三段の引き出しがあった。
手紙やら書類やらが入っている中に一枚の写真。
そこには、海水浴に行った親子のような3人が写っていた。
父親と1年生くらいの男の子とその母親らしき女の人。
子供ながら、あぁ、この人と付き合ってんのか?再婚したのか?とピンときた。
実の子ほったらかしで何やってんだこの人は…。
という気持ちとあぁ、私は本当にこの人に捨てられたんだな、新しい家庭があるのか…。
と、なんだか自分の存在が全否定された気がしてガッカリした。
実際は再婚まではしていなかったのだが、「もうこの人は父親じゃないわ…。」私はそんな気持ちになった。
しかし、なんでこんなに家財道具が?
今でも詳しいことはわからない。
その女の人と別れて邪魔になったか、また夜逃げでもしたか…。
本当のことは今も知らない。
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