尚美ちゃんの謝罪
尚美ちゃんに絶交宣言した次の日、学校で尚美ちゃんは謝ってきた。「もう約束は破らない、ごめんね。」
私は尚美ちゃんが大好きだったし、一緒に遊ぶのも楽しかった。
尚美ちゃんだけでなく、尚美ちゃんの家族がみんな優しかったし、いつ行っても歓迎してくれて、もう遊びに行けなくなるのは寂しかった。
尚美ちゃんのいとこのお姉さんに会えなくなるのも嫌だった。
それに尚美ちゃんは小鳥仲間だった。
だから、もちろん仲直りした。でも、約束は絶対に破らないでほしいことを強くお願いした。
約束を破らないでというか、「私だけと仲良くして!」という気持ちが強かった。
ものすごく心が狭い話だ。もちろん休み時間も常に一緒。そのせいもあってか、私は当時のクラスメイトが何人かしか思い出せない。
尚美ちゃんはきちんとした両親に丁寧に育てられていて本当にしっかり者で、こんな私と誠実に仲良くしてくれていた。
そう、私が歯医者に行けるようになったきっかけも実は尚美ちゃん効果だった。
「一緒に行こう!歯医者終わったら一緒に遊ぼう!」と言ってくれて、尚美ちゃんと一緒ならと頑張って夏休みには歯医者に通った。
あんなに大暴れで全力拒否していたのに、尚美ちゃんが一緒だと心強かった。
その後
しばらくは今まで通り楽しく遊んでいたが、またあのいとこのお姉さんの友達がやってきた。
尚美ちゃんの家の隣に空き地があってその日、空き地で私たちはたわいのない遊びをしていた。
その日のことは未だに鮮明に覚えていて忘れられない。
私と尚美ちゃん、いとこのお姉さんで砂場に山を作るような感覚で、砂利の山に階段を作って遊んでいた。
そこにまたお姉さんの友達がやってきて、頼みもしないのに「一番上手にできた人のところにこの葉っぱを置いてあげる!」と言ってハートの形のアイビーの葉っぱを見せてきた。
みんな(私も含め)「ハートの葉っぱ可愛い!」と声を上げた。
一番の人にはその葉っぱをプレゼントしてくれるという。
そして、「うーん」と顎に手を当てて考える素振りをして、尚美ちゃんのところといとこのお姉さんのところに葉っぱを置いた。
私は、自分のが一番よくできていたと思っていて選ばれる自信があった。
でも、選ばれなかったことで心底腹が立ち「一番よくできた人なんて決めて欲しいと思っていなかったし、遊ぶ約束してないのに何でいつも勝手に入ってくるの?」
と言い放った。
そして「尚美ちゃん約束したのに嘘つき!」
と八つ当たりして怒りながらプイッと帰った。
尚美ちゃんといとこのお姉さんは追いかけてきたけど、振り向かないで走って帰った。
走って、走って、走って、家について泣いた。
こんなしょうもないことで、怒って帰ってしまった私だけど、もうその時は「何なのあの人⁉」という気持ちでいっぱいで全く周りの気持ちを考えられなかった。
結局、私たちは、尚美ちゃんがそろばん教室に通い始めたのをきっかけにだんだん疎遠になった。
大人になって
それから何年も後、たまたま警察署で尚美ちゃんに会った。誕生日が近かった私たちは免許の書き換えで偶然同じ日に警察署に来ていたのだ。
尚美ちゃんは気が付かないふりをしていた。
あの一件以来、ずっと距離を置いていたし、全く話さなかったわけではないけど、同じクラスになることもなかったし、高校も別々で私たちは長い間距離があった。
尚美ちゃんは別の友達と仲良くしていたし、私もその後何人もの友達ができた。
私は意を決して話しかけた。というのも、別の友達から尚美ちゃんが結婚すると聞いていたから。
私もその時すでに結婚していて、一人目の子を妊娠していた。
私「尚美ちゃん久しぶり、結婚するんだって?聞いたよ」
尚「久しぶり、そう3月に式挙げるんだよ。」
私「そっか~いいな~私、式は挙げてないからさ。」
尚「でも赤ちゃん生まれるんでしょ?楽しみだね。」
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確かこんなやり取りをして、免許証が出来上がり私は先に帰ることになった私はまた尚美ちゃんに声をかけた。
私「じゃあね、尚美ちゃん。」
尚「うん・・・。ねえ、まぁ(尚美ちゃんは私をまぁと呼んでいた)変わったね・・・。」
私「え?そう?」
尚「うん、優しくなったっていうか・・・。」
私「ハハハ、ありがと(笑)じゃあね。」
帰り際、こんな話をした。
私は、今でもアイビーのハート形の葉っぱを見るたびにこの時のことを思い出してしまう。
そして、あんな言い方しかできなかった自分がとても恥ずかしいと思っている。その後会うこともなくなった尚美ちゃんは元気にしてるんだろうか?と時々思い出したりしている。
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